12/15
時刻は夕方4:30過ぎ。
煙草を切らした僕は近所のコンビニへと出かけた。
このコンビニという存在は名前の通り「便利」な物であるが
特に「何かある」場所でもない。
ただ不思議なことに、その「何も無い」場所なのにも関わらず妙な安心感がある場所でもある。
深夜の暗い田舎道をカブで走っていて山道を抜けた先にコンビニを見つけると妙に安心したりする。
その点では深夜のコンビニの前で目的も無くタムロしているオツムの弱そうな若者の気持ちが少ーしだけ理解できる。
きっと彼らも「何か」が不安で、あの24時間落ちる事のない光に吸い寄せられるのだろう。
そんな事を考えてる間に・・・いや本当は「早く煙草を吸わせろ」程度の事しか考えてなかったが
そうこうしている間にコンビニに到着した。
帰宅ラッシュ前のデッドタイムなのだろうか?
不思議な事にコンビニ店内にはレジ店員1名とレジ前に並ぶ客1名。
その2名しか居なかった。
煙草を買うしか目的は無かったので店内商品を物色する事なくレジに並ぶ。
先にレジに居た客は見た感じ「オフの状態の水商売風の女性」
手には何も商品を持っていない。
おそらく時間帯から考えても「あーだりぃー、今日同伴入ってんだよなー、けど起きたら煙草切れてるしコレ買ったら戻って支度しなきゃなー」な感じがプンプンしていた。
案の定「52番1つ」と端的に銘柄指定だけして煙草を買いに来たようだ。
店員が指定された銘柄を持ってきて途端、即座にレジ画面の「年齢確認ボタン」を押すと
トレイに小銭を手の平から少し雑に投げ入れると
店員の「440円になりまーす」の声も聞かずにスッと店舗を後にした。
無礼な客なんぞ、これまで何百人と見てきたであろう店員は表情も変えずにトレイの小銭を集めていた。
その小銭を集め終わろうとする所で店員の表情が変わった。
「お客様!10円足りません!」
しかし時既に遅し。
そこに小銭を投げ入れた彼女は、とっくに店から出て行ってしまっているんだから。
「っとに・・ったく!」と言った感情が読み取れるような「・・はぁ」と溜息が聞こえた。
「ん?どうすんの?」と思った瞬間、店員は僕がレジ待ちしている事など気づいてないかの様に
僕に目線もくれず声も掛けずに店を出て行ってしまった。
ぽかーん。
いや、きょとん。の方がこの時の僕の感情に近い。
そして、ふと自分の状況を思い出した。
いま、このコンビニには僕しか居ない。
正確には恐らくバックヤードにもう1人くらい店員が居たのだろうが
パッと見の置かれた状況は
漫画やアニメで観た「何らかの原因で自分たち以外が存在しなくなった無人の街の店」である。
おいおいおい!「うる星やつら2ビューティフルドリーマー」じゃないですか!
レジ棚に先ほどの430円も置きっぱなしじゃん!いや、棚を見ろ!煙草の在庫がギッシリだ!
ちまちま1個づつ買う必要がなくなるぞ!
夕方前だけあってホットスナックコーナーにはアメリカンドックもカラアゲ棒もギッシリだ!
深夜のコンビニだと「もう揚げ物なんか売らねえよー」といった感じのカラッポの保温器とは違うぜ!
ふはははは!この店内の煙草も食料も雑誌も飲料も各種プリペイドカードも!
全て私の物ではないかぁあああああああ!
って事を想像するくらいの時間、店舗が無人だったのです。
5分ないしは3分。
なんとか追いかけて10円を貰ってきたであろう店員が戻って来た。
手に何も持ってない僕を見て煙草を買いに来たと判断したのだろう。
「すいません、御待たせしました」も何も言わないまま「何番ですか?」と突然レジ業務に戻った事に
再び驚いた。
たぶん「店内に客1人残して店を出る」ことさえ、この店員に取っては「いつもの事」なのだろう。
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